カラフト伯父さん

4月29日の夜、カラフト伯父さんを観てきました。

観てから、考え込んだり、悲しくなったり、いろいろと感情が目まぐるしすぎて、頭の容量がどうも足りないので、とりあえず今の感想を書いておこうかと思います。

 

以下、ネタバレ注意です

 

いのおくんの引き出しってどうなってるんだろう?いままでのイメージとして、ほわほわしてて、顔がかわいくて、だけど芯が通っている話し方をするひと、というのがあったけど、舞台に立ついのおくんはそのどれとも違った。徹くんだった。この徹くんというひとは、感情の爆発がすさまじい一面もあれば、じぶんの感情を奥に奥に押し込んで本心を隠そうとする一面もある。徹くんというひとにどうやって共感して、じぶんの記憶と徹くんをつなぎ合わせて、取り込んで、徹くんになったんだろう。演じるのに相当なエネルギーが必要な役だなあと思った。

 

カラフト伯父さんは、全編通して、徹くんの底の見えない悲しみが漂っていて、その悲しみはあまりに深くてぞっとしてしまうくらい。わたしはその悲しみにどっぷりと浸かってしまって、この2日間生活がままらなかった。こんなに気持ちが揺らぎ続けるのは久しぶりで、なんだか戸惑ってしまった。お母さんが亡くなって、カラフト伯父さんに言われた「お母さんはほんたうのさいわひを探しに行ったんだよ」という言葉、これってつまり、徹くんといた日々にはほんたうのさいわひはなかった、とも受け取れるわけで。なんて残酷なんだ。希望のように聞こえるのに実は絶望。徹くんはそれからずっと、この言葉に憑りつかれて生きていったんじゃないかな。阪神淡路大震災があって、お父さんも亡くなって、徹くんはひとりぼっちになった。でも、ずっと、「徹のこと照らしてあげるよ」と言ってくれたカラフト伯父さんが助けに来てくれるのを待ってた。でも、来なかった。それはいろいろな事情があったんだけど、でも、そんな事情なんて蹴っ飛ばして、徹くんは助けに来てほしかったんだよね。子供みたいに、カラフト伯父さんの言葉にすがって、寂しさに溺れそうになりながらも生きていた徹くんは、きっと精神的にはあんまり成長してない。抱きしめてほしいって震える子供のまま。でも、そんな子供のままではひとりで生きていけないから、バリアを張って、じぶんのもろい心を必死で守ろうとしてたんだと思う。大人になろうとした。ひとりでも、生きていけるように。だから、カラフト伯父さんがやってきても、ずっと心を閉じたまま、怒りをぶつけるばかりで、それは、シャボン玉みたいにはじけてしまいそうな心を守ろうとしてたんじゃないかなって今になって思う。なんて、、悲しいひとなんだろう、、、でも、カラフト伯父さんと一緒に来た妊婦の仁美さんにはとても優しくて、それはなんでだったんだろう?もちろん最初は拒絶していたけど、だんだん心を開いて、ぶきっちょなやさしさを向けて、最後には仁美さんのために椅子まで作ってあげちゃうの、なんだか泣けた。徹くんは、優しいひとなんだな~。優しくて、あったかいひとなんだ。そういうところが伝わってくるから、徹くんと仁美さんのふたりのシーンはとてもほほえましくて、空気が優しかった。

 

舞台のほとんどは、徹くんはカラフト伯父さんに対して怒って拒絶してばかりで、どうしてそこまで憎んでいるのかは明かされないのだけど、最後の独白で徹くんの口から語られることになる。ここがこの舞台のクライマックス、というか、このシーンのために今までのシーンがあったのでは、と思うほどの山場。それが徹くんの独白なのだから、いのおくんはものすごいプレッシャーをかけられているよな…。なぜ、こんなにもカラフト伯父さんが憎いのか。でもそれって、裏を返せば、どれだけカラフト伯父さんを愛しているのか、ということなわけです。徹くんがカラフト伯父さんを「ヒーロー」とあらわしたの、胸が苦しくなった。「ヒーロー」であり、「光」であり、「神様」みたいな存在だったのかな。ずっと助けてくれるのを待ってたんだよね。悲しみの底にいても、光が射してくれるのを心の奥ではずっと待っていたんだよね。今まで言えなかった思いを、声に出して叫ぶシーン、熱かった。熱すぎて痛かったほど。言葉に表せないので、これはもう、見て!としか言えない…。

 

この日は熱演だったと聞いた。わたしはこれが初めての観劇で、熱演というのは今までの公演と比較して、という意味だったらその感覚はわからないけど、じぶんの目に映った徹くんは叫びながら命を燃やしているみたいだった。バリアを溶かそうとしてた。ずしんと、響いてきたよ。この翌日、共演の松永さんが「青年が舞台俳優へと羽化する瞬間を目撃した」と評していらっしゃって、そんな瞬間に立ち会えたのはとても光栄なことだと思った。きっとこれからどんどん成長していくんだと思う。初見のお客様の純粋な「いい舞台だった!熱演だった!」って感想を見るのがとても楽しみ。いのおくんならできると思う。応援してます。

 

 

徹くんの悲しみに共鳴してしまってぐるぐるしていたけど、こうやって支離滅裂でも感想を書いたらちょっとすっきりした~。それほどいのおくんの演技がわたしの心に刺さってきたってことだよ。また落ち着いたらちゃんと書くかもしれないけど、きょうはとりあえずこのへんで。あ、カテコで柔らかく笑いながらひらひら手を振るいのおくんは、いつものいのおくんで、なんだかほっとして、泣けました。いのおくんおかえり。そしていってらっしゃい。徹くん。これからもいってらっしゃいとおかえりがグローブ座で繰り返されると思うと胸が苦しい。体に気を付けて、がんばってね。徹くん、いってらっしゃい。